配信と収録を同時に行う理由

イベントのライブ配信と収録を同時に行うのは現場の標準です。

  • ライブ配信は圧縮(6〜8Mbps)されるため、アーカイブ用としては品質が不十分
  • 配信後に編集・再公開・DVD/Blu-ray化する場合に高品質素材が必要
  • 配信のトラブル時にローカル収録があると後日公開できる

パターン①:OBSで配信+録画を同時に行う

最もシンプルな方法です。OBS Studioは配信と録画を同時に実行できます。

設定の分離

OBSの「録画」設定は「配信」設定とは独立して設定できます。

配信設定:

  • コーデック:H.264
  • ビットレート:6000〜8000kbps(6〜8Mbps)
  • 解像度:1920×1080
  • FPS:30

録画設定(高品質):

  • コーデック:H.264(NVENC CQP 18)またはH.265
  • ビットレート:固定でなくCQP(品質優先)
  • 解像度:1920×1080(または4K)
  • FPS:60(必要に応じて)

設定 → 出力 → 録画タブ で配信と別の設定が可能です。

PC性能への影響

配信と録画を同時に行うとPCの負荷が増えます。

対策:

  • GPUエンコード(NVENC/QuickSync)を使うとCPU負荷を大幅削減できる
  • 録画用コーデックをCQP(品質固定)に設定するとビットレート変動を自動調整
  • 配信と録画を同じエンコーダタイプにしない(配信NVENC・録画ProRes等)

パターン②:スイッチャーのISO録画機能を使う

Blackmagic ATEM Mini Extreme ISO等のスイッチャーは「ISO録画」に対応しています。

カメラ1 →┐
カメラ2 →├→ ATEM Mini Extreme ISO → 配信PC(OBS)→ YouTube
カメラ3 →┘      ↓
             各カメラのISO個別録画(USBドライブへ)
             + スイッチング後の映像も録画

ISO録画では:

  • スイッチング後の映像(PGM)が録画される
  • 各カメラの映像が個別ファイルとして録画される

後から別アングルで再編集できるため、高品質なアーカイブが作れます。

ISOの容量に注意

4カメラをISO録画すると、素材量は4倍になります。4時間のイベントで各カメラ50Mbps×4=200Mbps分のデータが必要です。接続するUSBドライブの容量と書き込み速度を事前に確認します。

パターン③:外部レコーダーを使う

スイッチャーのHDMI出力を外部レコーダーに接続して、高品質収録と配信を分離します。

カメラ → スイッチャー
              │
              ├→ HDMI出力 → 外部レコーダー(Atomos Ninja等)→ 高品質録画
              │
              └→ 配信PC(OBS)→ YouTube

外部レコーダー(Atomos Ninja V等)はProRes・DNxHDでの収録に対応しており、配信PCとは独立して動作します。配信PCがクラッシュしても収録は継続します。

代表的な外部レコーダー:

  • Atomos Ninja V: HDMI/SDI入力・ProRes・DNxHD対応・SSDへ収録
  • Blackmagic Video Assist: HDMI/SDI入力・ProRes・H.265対応
  • ZOOM Q8n-4K: カメラ一体型・4K収録対応

パターン④:配信PC+別収録PC

大規模イベントでは配信と収録を別のPCで行います。

スイッチャー
    ├→ 配信PC(OBS → RTMP → YouTube)
    └→ 収録PC(OBS or Wirecast → ローカル録画)

収録PCは配信の帯域・処理負荷を共有しないため、最高品質での収録が可能です。ただし機材と設置スペースが増えます。

配信と収録の品質差

項目 配信(RTMP) OBS同時録画 ISO録画(ProRes)
ビットレート 6〜8Mbps 30〜100Mbps 100〜600Mbps
品質 圧縮あり 高品質 最高品質
編集性 低い 中程度 高い
コスト 0 0(追加機材不要) スイッチャー・SSD費用

現場でよくある注意点

録画開始・停止のタイミング

OBSで録画と配信を同時に開始しているか確認します。「配信は始まったが録画を忘れていた」というミスは現場でよくあります。本番前のチェックリストに必ず入れましょう。

ストレージの空き確認

長時間イベントでは収録データが数十GB〜数百GBになります。本番前にストレージの空き容量を確認します。

ファイルの分割

一部のカメラやレコーダーはファイルを自動分割します(4GBごと等)。長時間収録の場合は編集時に継ぎ目をつなぐ必要があります。

まとめ

小規模イベントならOBSの配信+録画同時機能が最もシンプルです。複数カメラで後から再編集したい場合はISO録画対応のスイッチャーが有効です。大規模・高品質が必要な場合は外部レコーダーや収録専用PCの導入を検討します。いずれの構成でも「本番前の録画テスト」は欠かさないようにしましょう。