収録データの管理が重要な理由
イベントの収録データは再現不可能なものです。機材が故障・ドライブが壊れた・誤って削除したといった理由で失われると、取り返しがつきません。
「1箇所に保存している」では不十分です。収録が終わった瞬間から、バックアップの確認まですべての作業がデータ保護です。
ストレージの種類と選び方
SSD(ソリッドステートドライブ)
現場収録の主力です。
| 規格 | 速度 | 特徴 |
|---|---|---|
| USB3.2 Gen2 SSD | 900〜1000MB/s | 高速・コンパクト・収録向き |
| Thunderbolt3/4 SSD | 2000〜3000MB/s | 超高速・Mac向け・高価 |
| M.2 NVMe(内蔵) | 3000〜7000MB/s | 配信PC内蔵ストレージ |
SSDを使う理由:
- 落下・振動に強い(HDDは衝撃で壊れる)
- 書き込み速度が安定している
- 軽量・コンパクト
ProRes等の高ビットレート収録(500Mbps以上)には高速なSSDが必要です。
HDD(ハードディスクドライブ)
- 用途: バックアップ保管・長期アーカイブ
- メリット: 大容量・安価(1TBあたりの単価がSSDより低い)
- デメリット: 振動・衝撃に弱い・現場収録には不向き
現場でのリアルタイム収録には使わず、現場終了後のバックアップ先として使います。
CFexpressカード・CFast
業務用カメラ・ビデオカメラの内蔵収録に使うメモリーカードです。
- 高速書き込み・コンパクト・交換が簡単
- 大容量は高価(512GB〜1TBは数万円)
- 撮影終了後はPCにコピーして管理
ファイルサイズの計算
本番前に必ず容量を見積もります。
計算式
ファイルサイズ(GB)= ビットレート(Mbps)÷ 8 × 収録時間(秒)÷ 1024²
収録時間別の目安
| コーデック・ビットレート | 1時間 | 4時間 | 8時間 |
|---|---|---|---|
| H.264 20Mbps | 9GB | 36GB | 72GB |
| H.264 50Mbps | 22GB | 90GB | 180GB |
| ProRes 422 1080p30 | 66GB | 264GB | 528GB |
| ProRes 422 4K30 | 265GB | 1060GB | 2.1TB |
4時間のイベントをProRes 1080pで収録すると約264GBになります。500GBのSSDでは足りません。
カメラ別に計算
マルチカム収録ではカメラ台数分の容量が必要です。
必要容量 = 1台分の容量 × カメラ台数 + 余裕20%
例:4台 × 36GB(H.264 20Mbps・1時間)= 144GB + 余裕 ≒ 180GB
現場でのバックアップ手順
3-2-1バックアップの原則
| 数字 | 意味 |
|---|---|
| 3 | データのコピーを3つ持つ |
| 2 | 2種類の異なる媒体に保存 |
| 1 | 1つはオフサイト(別の場所)に保管 |
現場での最低限:
- 収録SSD(現場に持ち込んだメイン)
- 別のSSDまたはHDDへ即時コピー
本番終了後すぐにコピーを開始し、コピー完了前にデバイスを運搬しない。
コピーツールとチェック
単純なコピー(Windowsのコピー&ペースト等)でも問題ありませんが、ハッシュ値(チェックサム)を確認するツールを使うと転送エラーを検出できます。
- rsync(Mac/Linux): ハッシュ検証付きの信頼性の高いコピー
- rclone: クラウドへのコピーにも対応
- FreeFileSync: GUIで使いやすい差分コピーツール
クラウドバックアップ
現地コピーに加え、インターネット回線がある場合はクラウドへのアップロードも有効です。
- Google Drive / OneDrive: 大容量プランで対応可能
- Backblaze B2: 安価なクラウドストレージ(転送費用安い)
- Amazon S3 Glacier: 長期アーカイブ向け
高ビットレートの大容量ファイルのアップロードは時間がかかります。翌日・翌々日にまたがる場合も多いです。
長期保管の考え方
ドライブの寿命
- SSD:5〜10年(電源を入れ続けている場合。放置すると電荷が抜ける)
- HDD:3〜5年(物理的な消耗)
定期的に別媒体へ移行することが必要です。 5年前の外付けHDDだけに頼るのは危険です。
ファイル形式の保存性
長期保存には汎用性の高いフォーマットを使います。H.264はほぼ永久的に再生可能なほど普及していますが、専用フォーマット(一部のカメラ独自形式等)は将来再生できなくなる可能性があります。
長期アーカイブの推奨フォーマット:
- 映像:H.264 MP4またはMOV
- 音声:WAVまたはMP3
まとめ
収録データは現場収録SSD → 即時コピーという2段階の保護を最低限行います。ファイルサイズを事前に計算してストレージ容量を確保し、本番後は素早くバックアップを実行します。大切な収録データは「保存した」ではなく「バックアップが確認できた」まで完了とする意識を持つことが重要です。