収録と配信の違い
ライブ配信はリアルタイムで視聴者に映像・音声を届けるものです。一方、収録はイベントの映像・音声をファイルとして保存することです。
両者の主な違い:
| 項目 | 配信 | 収録 |
|---|---|---|
| 目的 | リアルタイム視聴 | 後から編集・公開・保管 |
| 品質 | ビットレート制限あり | 高品質で保存可能 |
| ファイル | 生成されない(ストリーム) | ローカルに保存 |
| 容量 | 不要 | 大きなストレージが必要 |
多くのイベントでは配信と収録を同時に行います。配信は6Mbpsに圧縮して送出しつつ、収録は高品質で手元に残す、という使い方が一般的です。
音声の基礎
サンプルレートとは(44.1kHz vs 48kHz)
サンプルレートは音声を1秒間に何回サンプリング(測定)するかを示す値です。
- 44.1kHz: CDの規格。音楽向け
- 48kHz: 映像・放送の標準規格。イベント・配信収録ではこれを使う
映像に同期させる用途(動画編集・放送)では48kHzが標準です。44.1kHzと48kHzが混在するとピッチズレの原因になります。機材の設定を統一することが重要です。
ビット深度とは(16bit vs 24bit)
ビット深度は音の大きさ(ダイナミクス)をどれだけ細かく表現できるかを示します。
- 16bit: CD規格・約96dBのダイナミックレンジ
- 24bit: プロ向け収録の標準・約144dBのダイナミックレンジ
収録では24bitを選ぶのが基本です。音が小さすぎた・大きすぎた場合の後処理の余裕が大きくなります。配信では16bitでも問題ありません。
音声フォーマットの種類
| フォーマット | 圧縮 | 特徴 | 用途 |
|---|---|---|---|
| WAV | 非圧縮 | 高品質・大容量 | 収録マスター・編集素材 |
| AIFF | 非圧縮 | Mac向け・WAVと同等 | Mac環境での収録 |
| MP3 | 非可逆圧縮 | 小容量・品質は劣化 | Web配布・ポッドキャスト |
| AAC | 非可逆圧縮 | MP3より効率的 | 配信・YouTube |
| FLAC | 可逆圧縮 | WAVと同音質・半分の容量 | 高音質アーカイブ |
収録マスターはWAV(48kHz/24bit)一択です。 後からMP3・AACに変換できますが、逆はできません。
映像の基礎
解像度とフレームレートの選び方
| 解像度 | 用途 |
|---|---|
| 1080p(FHD) | 標準。ほとんどのイベント収録はこれで十分 |
| 4K | 後から切り出し・拡大が必要な場合。ストレージと処理負荷が大幅増 |
| 720p | 配信専用・容量節約が必要な場合 |
フレームレートは29.97fps(30fps)または59.94fps(60fps) を選びます。日本のNTSC規格に合わせるためです。ゲーム・eスポーツ系は60fps、一般的な講演・セミナーは30fpsで十分です。
収録用コーデックの違い
| コーデック | 特徴 | ファイルサイズ(1時間・1080p) |
|---|---|---|
| H.264 | 汎用・再生環境が広い | 10〜30GB |
| H.265(HEVC) | H.264より高圧縮・一部機器で再生不可 | 5〜15GB |
| ProRes(Apple) | 高品質・編集向け | 50〜200GB |
| DNxHD(Avid) | 業務向け編集コーデック | 40〜150GB |
収録マスターはH.264またはH.265(高ビットレート設定) が現実的です。ProResは品質が最高ですが容量が膨大になります。
ファイルサイズの目安(1時間あたり)
| 解像度・コーデック | ファイルサイズ |
|---|---|
| 1080p H.264 30fps 20Mbps | 約9GB |
| 1080p H.264 30fps 50Mbps | 約22GB |
| 4K H.264 30fps 100Mbps | 約45GB |
| 1080p ProRes 422 30fps | 約66GB |
配信と収録を同時に行う構成
OBSの録画機能
OBS Studioは配信と同時に録画ができます。
- 配信用: H.264・6〜8Mbps・1080p30
- 録画用: H.264・高ビットレート(30〜50Mbps)またはほぼロスレス(NVENC CQP 18等)
OBSの録画設定で「高品質、ファイルサイズを抑えない設定」にすることで、配信とは独立した高品質な録画を残せます。
別収録(マルチカム・ISO録画)
配信スイッチャー(Blackmagic ATEM Mini Extreme ISO等)では、各カメラの映像を個別のファイルとして録画できます(ISO録画)。これにより本番後に別アングルで再編集が可能です。
保存・バックアップの考え方
ストレージの選択
| 媒体 | 読み書き速度 | 特徴 |
|---|---|---|
| SSD(外付け) | 400〜1000MB/s以上 | 高速・振動に強い・収録向き |
| HDD(外付け) | 100〜200MB/s | 安価・大容量・振動に弱い |
| USBメモリ | 30〜400MB/s | 容量小・搬送に便利 |
現場収録はSSDを使います。 HDDは振動やケーブルの抜き差しでエラーが起きやすいです。
3-2-1バックアップ
重要なイベント収録データは以下の原則で保管します。
- 3: コピーを3つ作る
- 2: 2種類の異なるメディアに保存する
- 1: 1つはオフサイト(別の場所)に保管する
現場では少なくとも「SSD収録 + 別SSDまたはHDDへの即時コピー」を実施します。
まとめ
収録の基本は音声をWAV 48kHz/24bitで、映像はH.264高ビットレートまたはProResで保存することです。配信は圧縮したデータを送り出すだけですが、収録は後の編集・アーカイブを見据えた設定が必要です。容量とストレージを事前に計算し、現場でファイルサイズが溢れないよう準備しておきましょう。