QoSとは
QoS(Quality of Service)は、ネットワーク上のパケットに優先度を設定し、重要なトラフィックを優先的に通過させる仕組みです。
回線が混雑したとき、優先度の低いパケットを待たせて、優先度の高いパケットを先に送り出すことで、配信の安定性を保ちます。
QoSが必要になる状況
回線に余裕がある状態(50Mbps回線で10Mbpsしか使っていない等)ではQoSはほぼ意味がありません。QoSが効果を発揮するのは回線が混雑しているときです。
具体的には:
- スタッフが大容量ファイルをダウンロードしながら配信している
- 観客Wi-Fiの帯域使用量が急増して配信の帯域を圧迫している
- 複数の配信・Zoom・NDIが同じ回線を共有している
QoSの分類方法
トラフィックを分類して優先度を設定します。分類方法は主に3つです。
①ポート番号で分類
特定のTCP/UDPポートを使うトラフィックを優先します。
| プロトコル | ポート番号 |
|---|---|
| RTMP | TCP 1935 |
| SRT | UDP 9000〜(設定による) |
| Zoom | UDP 8801〜8802 |
| HTTP/HTTPS | TCP 80/443 |
RTMPはTCP 1935を使うため、このポートを最優先に設定します。
②IPアドレスで分類
配信PCのIPアドレスを指定して、そのデバイスからのトラフィックをすべて優先します。
192.168.10.100(配信PC)→ 最優先
192.168.20.0/24(スタッフ帯域)→ 中
192.168.30.0/24(観客Wi-Fi帯域)→ 低
③DSCP(差別化サービスコードポイント)
パケットのIPヘッダーにDSCPマーキングを付け、ルーター・スイッチがそれを読んで優先度を判断します。エンドツーエンドでQoSを統一できますが、設定が複雑です。
| DSCPクラス | 用途の目安 |
|---|---|
| EF(46) | 音声・リアルタイム動画 |
| AF41(34) | ビデオ会議 |
| BE(0) | 一般トラフィック |
QoSが効果を発揮する範囲
重要な制約:QoSが効くのは自分が管理するルーター・スイッチまでです。
配信PC → (QoS有効) → 自前ルーター → ISP回線 → インターネット
↑
ここまでしかQoSは効かない
ISPより先のインターネット上ではQoSは機能しません。ただし、拠点内での帯域配分(配信PCが優先的に回線を使えるようにする)は効果があります。
具体的な設定例(概念)
帯域制限付きキューを使った設定の考え方:
最大アップロード帯域:50Mbps として
配信(RTMP TCP1935):最低保証 15Mbps・最大 30Mbps
Zoom・会議系:最低保証 5Mbps・最大 20Mbps
その他:残りの帯域(最大 50Mbps)
このように「帯域保証」と「最大帯域」を組み合わせることで、配信が常に安定した帯域を確保できます。
QoSに対応した機器
家庭用ルーターでも「QoS」と表記された機能があるものがありますが、多くは簡易的なものです。
業務向けの確実なQoS設定には業務用ルーターが必要です:
- NEC UNIVERGE IX2105/IX2215
- YAMAHA RTX1300/RTX830
- Cisco RV340
- MikroTik(RouterOS)
QoSを設定する前に確認すること
- 回線の実際の帯域を計測する(設営後に speedtest.net 等で測定)
- 配信に必要な帯域を把握する(ビットレートの2倍)
- 混雑の原因を特定する(どの用途が帯域を食っているか)
QoSは万能薬ではありません。根本的に回線が細い場合は、回線を増強するか、配信ビットレートを下げる方が確実です。
まとめ
QoSは「回線が混雑したときに配信を守る保険」として機能します。ポート番号・IPアドレスでRTMPトラフィックを最優先に設定し、観客Wi-Fiや大容量ダウンロードが帯域を圧迫しても配信が落ちない構成を目指します。小規模イベントでは余裕のある回線選定の方がシンプルで確実です。