ネットワーク

VLANとは:配信現場でのネットワーク分離の考え方

VLANとは VLAN(Virtual Local Area Network)は、物理的に同じネットワーク機器に接続していても、論理的に異なるネットワークとして分離する技術です。 物理的なLANケーブルを引き直すことなく、設定だけで複数の独立したネットワークを作れます。 なぜ配信現場でVLANが必要か すべての機器が同じネットワークにいると、以下の問題が起きます。 帯域の奪い合い: 観客のスマートフォンが動画を見ると、配信の帯域が圧迫される セキュリティリスク: 配信PCと観客のデバイスが同じネットワーク上にある ブロードキャストの影響: 大量のデバイスによるブロードキャストが配信PCに届く VLANで分離することで、これらの問題を解決できます。 VLANの仕組み スイッチのポートに「VLAN ID」を割り当てることで、同じスイッチでも別のネットワークとして扱えます。 物理スイッチ(1台) ├── ポート1-4:VLAN10(配信系) ├── ポート5-8:VLAN20(運営Wi-Fi) └── ポート9-12:VLAN30(観客Wi-Fi) VLAN10に繋いだ配信PCと、VLAN30に繋いだ観客のWi-Fi APは、設定上は別のネットワークになります。 タグVLAN(トランクポート) スイッチとルーター間、またはスイッチとスイッチ間の接続では、タグVLAN(802.1Q) を使います。1本のケーブルに複数のVLANのデータを乗せて転送できます。 Wi-Fi AP(アクセスポイント)は複数のSSIDを1台で扱い、それぞれのSSIDに異なるVLANを割り当てることができます(VLAN対応AP限定)。 イベント現場でのVLAN設計例 VLAN ID 名前 主な用途 機器 VLAN10 配信系 配信・映像 配信PC・スイッチャー・NDIカメラ VLAN20 運営系 スタッフ業務 スタッフPC・タブレット VLAN30 ゲストWi-Fi 来場者 観客スマートフォン VLAN40 管理 機器管理 ルーター・スイッチ管理ポート 各VLANはルーターを通じてインターネットに出られますが、VLAN間の直接通信はルーターのACL(アクセス制御リスト)で制御します。 VLAN間の通信制御の例 VLAN10(配信) → インターネット:許可 VLAN20(運営) → インターネット:許可 VLAN30(ゲスト)→ インターネット:許可 VLAN30(ゲスト)→ VLAN10(配信):拒否(セキュリティのため) VLANに必要な機器 機器 必要条件 L2管理スイッチ VLAN設定に対応(「アンマネージドスイッチ」は不可) ルーター VLAN間ルーティング・DHCP per VLAN対応 Wi-Fi AP 複数SSID・タグVLAN対応(業務用AP推奨) 代表的な機器: ...

2026年5月8日 · 1 分 · evcast
ネットワーク

イベント会場ネットワークの基礎知識:帯域・VLAN・QoSとは

なぜイベントでネットワーク設計が必要か ライブ配信は途切れた瞬間に視聴者が離れます。他のスタッフやゲストがWi-Fiを使っているせいで配信の帯域が圧迫されたり、ネットワーク機器の設定ミスで配信が止まったりするのは、現場でよくある失敗です。 イベント会場のネットワークは「全員が共有するインフラ」です。設計なしに使うと、配信・PA・運営・観客が同じ回線を奪い合うことになります。帯域・VLAN・QoSの基本を理解することで、配信を安定させる設計が可能になります。 帯域の基本 アップロードとダウンロードの違い ライブ配信で重要なのはアップロード帯域です。視聴者に映像を送り出す方向が「アップロード」で、一般家庭の回線や4G/5G回線はダウンロードより大幅に遅い場合があります。 光回線(家庭向け):ダウン 1Gbps・アップ 100〜500Mbps(実測値はさらに低い) 4G LTE:アップ 数〜数十Mbps(場所・混雑による) StarLink:アップ 10〜50Mbps(時間帯・天候による変動あり) 配信に必要な帯域の計算方法 配信ビットレートの1.5〜2倍を安定して確保できることが目安です。 例:1080p 30fps・6Mbpsで配信する場合 → アップロード実測値が 12Mbps以上 必要 配信必要帯域 = 配信ビットレート × 1.5〜2倍 例:6Mbps × 2 = 12Mbps以上確保が目安 ビットレートのギリギリで配信すると、ネットワーク揺れ(ジッタ)でバッファが溢れてフレーム落ちします。 複数デバイスが繋がると何が起きるか スタッフ・登壇者・観客が同じWi-Fiに繋がると、そのデバイスが帯域を消費します。 用途 消費帯域の目安 配信(RTMP 1080p) 6〜8Mbps アップ NDIカメラ1台 80〜120Mbps(LAN内) Zoom接続1人 2〜4Mbps 観客スマートフォン(SNS等) 1〜数Mbps 多人数が使う会場では、配信専用回線・配信専用Wi-FiをWi-Fi APレベルで分離することが重要です。 VLANとは何か VLAN(Virtual LAN)は、物理的に同じスイッチに繋がっていても、論理的に別のネットワークとして分離する技術です。物理的な配線を変えずにネットワークを分けられます。 VLANで何を分けるのか イベント現場では以下のように分けるのが基本です。 VLAN 用途 主な機器 VLAN10 配信系 配信PC、スイッチャー、NDIカメラ VLAN20 運営Wi-Fi スタッフPC、タブレット VLAN30 観客Wi-Fi 来場者スマートフォン VLAN40 管理系 ルーター管理、NWスイッチ管理 VLAN間のトラフィックはルーターで制御するため、配信PCが不審なブロードキャストを受け取ることがなくなります。 配信系と運営Wi-Fiを分離する理由 観客のスマートフォンがWi-Fiに多数接続しても、配信の帯域を直接奪われない 配信PCへの不正アクセスリスクが下がる QoSで配信トラフィックを優先しやすくなる VLANは対応スイッチ(L2管理スイッチ)とルーターが必要です。家庭用Wi-Fiルーター1台では原則不可能で、Cisco・YAMAHA・NEC UNIVERGE(IX2105等)などの業務用機器が必要です。 ...

2026年5月8日 · 1 分 · evcast

NEC IX2105 でイベント会場のVLAN・QoSを設定する

なぜイベントでVLANを分けるのか 「観客がWi-Fiでスマホを使い出したら配信がコマ落ちした」——これはVLAN分離なしの構成で起きる典型的な問題です。 全機器が同じネットワークにいると、観客のスマートフォンやスタッフのPCが帯域を消費した分だけ配信が影響を受けます。NEC IX2105 はコンパクトながら VLAN・QoS・複数DHCPサーバーをサポートしており、イベント現場への持ち込みに適した業務用ルーターです。 構成の概要 この記事では以下の構成を想定します。 StarLink(またはONU) ↓ NEC IX2105(GE0: WAN) ↓ L2管理スイッチ(トランクポートで接続) ├── VLAN10 ポート → 配信PC・スイッチャー └── VLAN20 ポート → スタッフ用Wi-Fi AP VLAN 用途 サブネット VLAN10 配信系(配信PC・スイッチャー) 192.168.10.0/24 VLAN20 運営Wi-Fi(スタッフ端末) 192.168.20.0/24 基本設定 インタフェース設定 IX2105 のWAN側(GE0)はDHCPクライアントとしてStarLinkルーターや光回線のONUに接続します。 ! WAN側(GE0):DHCPクライアント interface GigaEthernet0 ip address dhcp ip dhcp-client hostname ix2105-event no shutdown VLANサブインタフェースの作成 IX2105 ではサブインタフェース(GigaEthernet1.10等)にVLAN IDを割り当てることでVLANを構成します。 ! VLAN10:配信系 interface GigaEthernet1.10 encapsulation dot1q 10 ip address 192.168.10.1 255.255.255.0 no shutdown ! VLAN20:運営Wi-Fi interface GigaEthernet1.20 encapsulation dot1q 20 ip address 192.168.20.1 255.255.255.0 no shutdown 備考: GigaEthernet1 をL2スイッチへのトランクポートとして接続します。スイッチ側でもトランク設定(802.1Q)が必要です。 ...

2026年5月8日 · 2 分 · evcast
システム構成図

競技会場でStarLinkを使ってライブ配信した全構成

はじめに 屋内競技会(30チーム参加規模)の映像配信・音響・会場ネットワークを一から設計・構築・運用した記録です。インターネット回線はStarLinkを使用しました。 同じような規模のイベントを配信しようとしている方の参考になれば。 全体構成の概要 機材の大きな流れはこうです。 マイク・カメラ → Roland VR-6HD(映像・音声の集約) VR-6HD → USB-C → 配信用PC(OBSでRTMP配信) インターネット → StarLink → NEC IX2105 → VLAN分離 ネットワーク設計 配信PCと運営Wi-Fiを完全に分離するため、VLANを2つ構成しました。 VLAN 用途 帯域上限 VLAN10 配信PC専用 10Mbps VLAN20 運営Wi-Fi 1Mbps RTMPトラフィック(TCP 1935)にはQoSで5Mbpsの優先帯域を割り当て、配信が他のトラフィックに影響されないようにしています。 音声の取り回し 実況・解説用マイク:SM58(有線) 収音用:Sennheiser MKH416 ワイヤレス:ATW-1322(2ch) 全チャンネルをVR-6HDのミキサーに集約し、配信用ミックスと会場PAミックスを分岐しています。 ハマったポイント StarLinkのNAT問題 StarLinkルーターはデフォルトでNATを噛んでいます。IX2105のGE0.0をDHCPクライアントとして向けるか、StarLink側をバイパスモードにして対処しました。 VR-6HDのUSB-Cオーディオ認識 USB-C接続時にWindowsがVR-6HDのオーディオデバイスを正しく認識しないケースがありました。ドライバを手動インストールすることで解決。 まとめ StarLinkは遅延・安定性ともにイベント配信に十分耐えられるレベルでした。VLAN分離をしっかり設計しておくと、運営Wi-Fiが配信品質に影響しないので安心して運用できます。 相談・設計依頼はお問い合わせページからどうぞ。

2026年5月8日 · 1 分 · evcast