ネットワーク

StarLinkの特性と注意点:屋外イベントでの衛星インターネット活用

StarLinkとは StarLink(スターリンク)はスペースX社が運営する低軌道衛星インターネットサービスです。地上から約550km上空の衛星と通信し、既存の通信インフラがない場所でもブロードバンド相当のインターネット接続を提供します。 配信現場での利点: 山間部・屋外・施設外での配信が可能 既設インターネット回線がない会場での代替手段 光回線工事が不要(ディッシュとルーターのみ) StarLinkの回線特性 実測値の目安 StarLinkの実測値は時間帯・天候・衛星密度によって大きく変動します。 項目 目安 下りレート 50〜300Mbps(変動大) 上りレート 10〜50Mbps(変動大) レイテンシ 20〜60ms パケットロス 通常0.1%未満・悪天候時は増加 従来の静止衛星(約35,000km)と比べ、低軌道(550km)なのでレイテンシが大幅に低く、配信用途に使えるレベルです。 上りレートの変動に注意 配信で重要なのは上りレートです。StarLinkの上りは時間帯・衛星密度によって10Mbpsを下回ることもあります。 実際の現場では: 配信ビットレートは最大6Mbps以下に設定する OBSで「動的ビットレート」機能を有効にして自動調整させる 本番前の実測テストを必ず行う CGNAT(キャリアグレードNAT)の問題 StarLinkはCGNATを使用しており、固定のグローバルIPアドレスが割り当てられません。 配信への影響 影響なし(送信型): RTMP配信(OBSからYouTube等へ送り出す) SRT呼び出しモード(SRT Caller) 影響あり(受信型): SRT待ち受けモード(SRT Listener) 外部からのVPN接続(ポート開放不可) リモートデスクトップ CGNAT対策 Tailscaleを使う: Tailscale(ゼロトラストVPN)はCGNAT環境下でも動作します。StarLink経由でもTailscaleのP2Pまたはリレー接続が可能です。 SRTはCallerモードを使う: StarLink経由では受信側でなく送信側が接続を開始する「Callerモード」を使います。 設置・電源の注意点 アンテナの設置 StarLinkのディッシュ(アンテナ)は上空の視界が開けていることが必要です。 木や建物でアンテナ方向が遮られると接続が不安定になる StarLinkアプリ(スマートフォン)で「障害物チェック」機能を使い、設置前に確認する 屋外イベントでは前日に設置してテストしておく 消費電力と電源 機種 消費電力 Standard(丸型・旧) 50〜75W Standard(四角・新型) 40〜60W HighPerformance 110〜150W 電源の確保: AC100V電源が必要(延長コード・分電盤からの引き込み) 発電機を使う場合はA正弦波インバーター発電機を選ぶ(矩形波は機器を傷める) UPSを組み合わせると電源瞬断に対応できる 悪天候への対策 強雨・豪雪・濃霧では接続が不安定になることがあります。 雨除けを設ける(防水仕様ではあるが、直接の強雨は性能低下を招くことも) バックアップとして4G/5Gのモバイル回線を準備しておく 接続が切れた際の再接続時間(通常30秒〜2分)を考慮した配信設定をする バックアップ回線との組み合わせ StarLinkは優れた一次回線ですが、単独で本番配信に使うのはリスクがあります。 推奨構成: ...

2026年5月8日 · 1 分 · evcast
ネットワーク

イベント会場ネットワークの基礎知識:帯域・VLAN・QoSとは

なぜイベントでネットワーク設計が必要か ライブ配信は途切れた瞬間に視聴者が離れます。他のスタッフやゲストがWi-Fiを使っているせいで配信の帯域が圧迫されたり、ネットワーク機器の設定ミスで配信が止まったりするのは、現場でよくある失敗です。 イベント会場のネットワークは「全員が共有するインフラ」です。設計なしに使うと、配信・PA・運営・観客が同じ回線を奪い合うことになります。帯域・VLAN・QoSの基本を理解することで、配信を安定させる設計が可能になります。 帯域の基本 アップロードとダウンロードの違い ライブ配信で重要なのはアップロード帯域です。視聴者に映像を送り出す方向が「アップロード」で、一般家庭の回線や4G/5G回線はダウンロードより大幅に遅い場合があります。 光回線(家庭向け):ダウン 1Gbps・アップ 100〜500Mbps(実測値はさらに低い) 4G LTE:アップ 数〜数十Mbps(場所・混雑による) StarLink:アップ 10〜50Mbps(時間帯・天候による変動あり) 配信に必要な帯域の計算方法 配信ビットレートの1.5〜2倍を安定して確保できることが目安です。 例:1080p 30fps・6Mbpsで配信する場合 → アップロード実測値が 12Mbps以上 必要 配信必要帯域 = 配信ビットレート × 1.5〜2倍 例:6Mbps × 2 = 12Mbps以上確保が目安 ビットレートのギリギリで配信すると、ネットワーク揺れ(ジッタ)でバッファが溢れてフレーム落ちします。 複数デバイスが繋がると何が起きるか スタッフ・登壇者・観客が同じWi-Fiに繋がると、そのデバイスが帯域を消費します。 用途 消費帯域の目安 配信(RTMP 1080p) 6〜8Mbps アップ NDIカメラ1台 80〜120Mbps(LAN内) Zoom接続1人 2〜4Mbps 観客スマートフォン(SNS等) 1〜数Mbps 多人数が使う会場では、配信専用回線・配信専用Wi-FiをWi-Fi APレベルで分離することが重要です。 VLANとは何か VLAN(Virtual LAN)は、物理的に同じスイッチに繋がっていても、論理的に別のネットワークとして分離する技術です。物理的な配線を変えずにネットワークを分けられます。 VLANで何を分けるのか イベント現場では以下のように分けるのが基本です。 VLAN 用途 主な機器 VLAN10 配信系 配信PC、スイッチャー、NDIカメラ VLAN20 運営Wi-Fi スタッフPC、タブレット VLAN30 観客Wi-Fi 来場者スマートフォン VLAN40 管理系 ルーター管理、NWスイッチ管理 VLAN間のトラフィックはルーターで制御するため、配信PCが不審なブロードキャストを受け取ることがなくなります。 配信系と運営Wi-Fiを分離する理由 観客のスマートフォンがWi-Fiに多数接続しても、配信の帯域を直接奪われない 配信PCへの不正アクセスリスクが下がる QoSで配信トラフィックを優先しやすくなる VLANは対応スイッチ(L2管理スイッチ)とルーターが必要です。家庭用Wi-Fiルーター1台では原則不可能で、Cisco・YAMAHA・NEC UNIVERGE(IX2105等)などの業務用機器が必要です。 ...

2026年5月8日 · 1 分 · evcast
システム構成図

競技会場でStarLinkを使ってライブ配信した全構成

はじめに 屋内競技会(30チーム参加規模)の映像配信・音響・会場ネットワークを一から設計・構築・運用した記録です。インターネット回線はStarLinkを使用しました。 同じような規模のイベントを配信しようとしている方の参考になれば。 全体構成の概要 機材の大きな流れはこうです。 マイク・カメラ → Roland VR-6HD(映像・音声の集約) VR-6HD → USB-C → 配信用PC(OBSでRTMP配信) インターネット → StarLink → NEC IX2105 → VLAN分離 ネットワーク設計 配信PCと運営Wi-Fiを完全に分離するため、VLANを2つ構成しました。 VLAN 用途 帯域上限 VLAN10 配信PC専用 10Mbps VLAN20 運営Wi-Fi 1Mbps RTMPトラフィック(TCP 1935)にはQoSで5Mbpsの優先帯域を割り当て、配信が他のトラフィックに影響されないようにしています。 音声の取り回し 実況・解説用マイク:SM58(有線) 収音用:Sennheiser MKH416 ワイヤレス:ATW-1322(2ch) 全チャンネルをVR-6HDのミキサーに集約し、配信用ミックスと会場PAミックスを分岐しています。 ハマったポイント StarLinkのNAT問題 StarLinkルーターはデフォルトでNATを噛んでいます。IX2105のGE0.0をDHCPクライアントとして向けるか、StarLink側をバイパスモードにして対処しました。 VR-6HDのUSB-Cオーディオ認識 USB-C接続時にWindowsがVR-6HDのオーディオデバイスを正しく認識しないケースがありました。ドライバを手動インストールすることで解決。 まとめ StarLinkは遅延・安定性ともにイベント配信に十分耐えられるレベルでした。VLAN分離をしっかり設計しておくと、運営Wi-Fiが配信品質に影響しないので安心して運用できます。 相談・設計依頼はお問い合わせページからどうぞ。

2026年5月8日 · 1 分 · evcast