音響・PA

ミキサーの基礎:チャンネル・EQ・AUX・グループの概念

ミキサーとは ミキサー(オーディオミキサー)は複数の音声入力をまとめ、音量・音質を調整して出力する機器です。PAシステムの中心的な存在で、「音響卓」とも呼ばれます。 チャンネルストリップの構成 ミキサーは入力ごとに「チャンネルストリップ」という縦一列の操作系統を持ちます。上から下に信号が流れていくイメージです。 ゲイン(トリム) 入力信号の増幅量を決めます。ここで適切なレベルを設定しないと、後段でどう調整しても音質が悪くなります。ゲイン設定はミキシングの最初にやること。 目安:ピーク時にメーターが -18〜-6dBFS に収まるよう設定する。デジタルミキサーでは0dBFSがクリッピングの上限なので、余裕を持たせることが重要。 ハイパスフィルター(HPF) 低域をカットするフィルターです。マイクの扱い音(衣擦れ・ハンドリングノイズ)や低周波ノイズを除去できます。スピーチ系のマイクは基本的にONにするのが定石です。 EQ(イコライザー) 特定の周波数帯を上げ下げして音質を調整します。 帯域 周波数の目安 調整例 ロー(低域) 〜250Hz こもりを除去・重さを調整 ローミッド 250Hz〜2kHz 胴鳴り・声の厚みを調整 ハイミッド 2kHz〜8kHz 明瞭度・刺さりを調整 ハイ(高域) 8kHz〜 空気感・シャープさを調整 **原則:上げるより下げることを優先する。**上げると位相や音の不自然さが出やすいです。 コンプレッサー 音量の差を圧縮して、大きい音と小さい音の差を縮めます。スピーチの音量ムラを抑えるのに有効です。 フェーダー そのチャンネルの音量を決めます。ミキサー下部にある大きなスライダーです。 AUX(補助出力) AUXはメイン出力とは別に音声を送る経路です。 主な用途: モニター送り: 演者のステージモニターに送る(プリフェーダー設定が一般的) 配信送り: 配信PC・AVミキサーに音声を送る エフェクト送り: リバーブ等のエフェクターに信号を送る AUXは「フェーダーの前(プリ)」か「フェーダーの後(ポスト)」かで動作が変わります。モニター送りはプリフェーダー(メインの音量に左右されない)が基本です。 グループバス 複数のチャンネルをグループにまとめて一括制御できる機能です。例えば「マイク系はグループ1」「映像音声はグループ2」とまとめると、それぞれのフェーダー1本で全体を操作できます。 アナログ vs デジタルミキサー アナログ デジタル 操作 つまみが物理的にある タッチパネル・ソフトウェア 直感性 高い(見れば分かる) 慣れが必要 リコール 不可(毎回設定し直し) 設定の保存・呼び出し可能 価格 低〜中 中〜高 小規模向け ◎ 〇 まとめ ミキサー操作の基本は「ゲインを正しく設定 → EQで不要な帯域を削る → フェーダーで音量バランスを作る」の順番です。AUXを使いこなすことで、配信やモニターへの音声分岐も柔軟に対応できます。 ...

2026年5月8日 · 1 分 · evcast
音響・PA

音の周波数帯域:各帯域の特性とマイク・EQへの応用

人間の可聴域 人間が聴き取れる音の周波数は、一般的に 20Hz〜20,000Hz(20kHz) とされています。この範囲を「可聴域」といいます。 年齢とともに高域(10kHz以上)の聴力は低下しますが、PA・配信の実務上は概ねこの範囲を扱います。 周波数帯域別の特性 超低域(20〜60Hz) 地鳴りやキックドラムの最低音が含まれます。大型サブウーファーでないと再生できない帯域です。 スピーチ収音では不要な帯域で、マイクを持つ手の振動・風のノイズが多く含まれます。ほぼ必ずカット(HPF)していい帯域です。 低域(60〜250Hz) 音の「温かみ」や「胴鳴り」が含まれます。男性ボイスの基音もこの帯域の下の方に入ります。 多すぎると「こもった音」「ブーミーな音」になります。特に密閉された会場では反響してこの帯域が溜まりやすいです。 低中域(250〜500Hz) 音の「厚み」がある一方で、過剰になると「こもり」「ダブつき」の原因になりやすい帯域です。 複数マイクが並ぶ状況ではここが重なりやすく、EQで少し削ることでクリアになることがあります。 中域(500Hz〜2kHz)★音声明瞭度の中心 声の明瞭度はこの帯域が鍵を握ります。 母音の響き・言葉の聞き取りやすさ・音の「存在感」がこの帯域に集中しています。 収録・配信において、スピーチの聞きやすさを上げたいなら1〜2kHz付近を数dB持ち上げるだけで効果があります。 高中域(2〜4kHz) 子音のアタック感・音の「前に出てくる感じ」がこの帯域にあります。 反面、過剰になると「耳に刺さる音」「きつい音」になります。長時間リスニングでの聴労(聴き疲れ)はこの帯域の過剰が一因です。 プレゼンス(4〜8kHz) 「s」「t」「k」などの子音、歯擦音・摩擦音がこの帯域に含まれます。適度に持ち上げると言葉の輪郭がはっきりします。 過剰だとシャリシャリした音・歯擦音がきつくなります。 高域・エアー(8〜20kHz) 音の「繊細さ」「空気感」「輝き」がある帯域です。収録品質の良し悪しがここに出やすいです。 スピーチでは必須ではありませんが、音楽系イベントではここが出ないと「こもった配信音」に聞こえます。 マイクの周波数特性 マイクにはそれぞれ「どの周波数をどのくらい拾うか」を示す**周波数特性(周波数レスポンス)**があります。 ダイナミックマイク おおむね 50Hz〜15kHz 程度をカバーします。低域〜中域が強く、高域は緩やかに落ちる特性を持つものが多いです。SM58などは4〜8kHz付近にプレゼンスピーク(意図的な持ち上げ)があり、ボーカル・スピーチで声の存在感が出やすくなっています。 コンデンサーマイク 20Hz〜20kHz をフラットに近い形でカバーするものが多く、高域の繊細さまで拾えます。ガンマイク(MKH416等)は超単一指向性+高域の伸びで、遠距離収音でも明瞭度を保ちます。 ラベリアマイク(ピンマイク) 小型のため高域が若干弱い機種が多いですが、口元との距離が近い分、低域〜中域の収音は安定します。 イベント・配信でのEQ活用 ローカット(HPF)は必ず確認する ミキサーのチャンネルには「HPF(ハイパスフィルター)」または「ローカット」ボタンがあります。スピーチ収音では 80〜120Hz以下をカットするのが基本です。 効果: マイクを持つ手の振動ノイズを除去 空調・床の振動ノイズを除去 他のチャンネルとの低域の干渉を減らす スピーチの聞きやすさを上げるEQ スピーチが聞きにくい場合の基本的なアプローチです。 症状 対処するEQ帯域 こもって聞こえる 300〜500Hz付近を少し下げる 聞き取りにくい・滑舌が悪く聞こえる 1〜3kHz付近を少し上げる 耳に刺さる・きつい 3〜5kHz付近を少し下げる 軽すぎる・薄い 150〜250Hz付近を少し上げる 「少し」とは±2〜3dBが目安です。EQは引き算を優先し、足し算は控えめに使うのが基本です。 マイクの周波数特性を知って使う ダイナミックマイクは高域が弱いためコンデンサーマイクより「柔らかい」音になりやすいです。これを理解した上でEQすることで、機材の特性を補えます。 まとめ 帯域 周波数 キーワード 超低域 20–60Hz ノイズが多い、HPFで基本カット 低域 60–250Hz 温かみ、過剰でこもる 低中域 250–500Hz ダブつき 中域 500Hz–2kHz 音声明瞭度の中心 高中域 2–4kHz アタック感、刺さり プレゼンス 4–8kHz 子音の明瞭さ 高域 8–20kHz 空気感・繊細さ 関連記事:有線マイクの種類と使い分け / マイクの指向性 / ワイヤレスマイクの種類と運用 ...

2026年5月8日 · 1 分 · evcast